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INTERVIEW

達人にときめき

保科さんのえのき茸

新鮮で、シャキシャキとした食感がある「保科さんのえのき茸」。牛ヶ島第一きのこコーポレーション(長岡市川口)の保科松生さんは、その生産者です。「えのき茸の話をすると、子どもの頃を思い出すんです」と懐かしそうに語ります。

「雪深い冬の魚沼地方で、えのき茸の季節栽培が始まったのは、1970年代の初めです。寒い冬の日、両親が向かいあってガラス瓶に、種(たね)つき作業をしていた姿を覚えています。通年栽培を始めたのは1980年代初めで、私はその頃に就農しました」
えのき茸は、専用の瓶のなかで栽培します。とうもろこし、米ぬか、おから、ビートなどをブレンドした土(培地)に水を加え、瓶に詰め、種(たね)を植えつけ、培養します。そのあと、えのき茸の菌糸を植え付け、芽出しを待ちます。

「森のなかでえのき茸が育つ秋の環境を、人工的に作るわけです。デリケートで、ストレスなく育てるためには、温度と湿度に気をくばります。大きな施設だと栽培と収獲も機械化されていますが、うちでは人の目で確認します。ですから、生産量は年間30~40万本に抑えるのが精いっぱいです」

施設の環境や、土(培地)と種の相性を考えた品種選びも、こだわりです。厳重に管理された施設を見学させていただくと、青く光る幻想的な雰囲気の部屋が。そこには、たくさんのえのき茸が育っていました。

「LED電気で青い光を3~4日当てると、えのき茸の赤ちゃんが顔を出します。光の当て方次第で、生育状況も変わります。丈の長さだけでなく、笠のかたちと大きさにも、気をくばります。見た目がいいので、私たちは小さめの笠にしています」

育ってくると、丈を揃えるため、瓶のまわりにカバーを巻きます。これもすべて手作業。こうして45~50日ほどかけて、収穫の日を迎えます。収穫したあとの土(培地)は、施設内で燃やして灰にし、地元の蕎麦づくりの肥料などに有効活用されています。
「ここまでくるのは、大変でした。とくに2004年10月23日の中越地震は忘れられません。施設が甚大な被害を受け、えのき茸も全滅。従業員や地元のみなさん、ボランティアさん、そして家族の協力で、あの危機を乗り越えることができました。親の代から受け継いだ味を、新潟のみなさんに食べていただけるのは、大きな励みです」

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